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    Feature特集

    和歌山県有田川町 Vol.2

    2018年7月、和歌山県有田川町で、ヴィラ アイーダ(和歌山・岩出)小林シェフが発起人となり、1泊2日のイベント「G.G.プロジェクト 感性の授業」が催されました。県内外からの参加者に、有田川の自然や産業に触れ、地元の食材を使ったディナーを楽しんでもらうというもの。ディナーのサービス(配膳)は有田川町内の高校生が、料理は小林シェフの呼びかけで集まったシェフたちが担当。キュイジニエ・オンラインでは、このイベントの準備から当日までの、シェフたちの活動を取材しました。(全4回)

    PHOTO: CUISINIER編集部

    前回(Vol.1)でお届けした5月の下見からおよそ2か月。メニューがほぼ決まり、いよいよイベント本番を迎えます。

    アイーダの小林シェフは会場入りのため、本番の前日、朝8時過ぎにお店を出発しました。有田川町の「どんどん広場」(地元の食材を豊富に置いている道の駅)で、メツゲライクスダ(兵庫・芦屋)の楠田シェフ、フロリレージュ(東京・神宮前)の川手シェフと待ち合わせです。

    • 先に着いていた小林シェフ。到着した楠田シェフ、川手シェフを見つけて、うれしそうな顔をしました。

    • 楠田シェフ(右)と川手シェフ(中央)。

    シェフたちはそれぞれのお店で仕込みを済ませてきていましたが、当日まで決まっていないメニューも。どんな料理にするか話しながら、野菜や果物を選んでいきます。和歌山県は全国でも桃の生産量が多く、7月はまさに最盛期。ここでは有田川町役場の職員さんや、「H3FoodDesign」の菊池博文さん(地方の食の本当の魅力を伝える活動に取り組み、料理人さんと深く交流)とも合流しました。

    • 売り場には桃がたくさんありました。

    • 買い物終了。車に積み込んで会場へ向かいます。

    会場の「やすけ」に到着すると、まずキッチンへ。冷蔵庫(レンタル)の配置を決め、食材や食器を使いやすいように整理していきます。調理器具はほとんどがアイーダからの持ち込み。小林シェフは細かな道具を火元の横にさっさっと並べていき、あっという間に、お店のキッチンが移動してきたようなレイアウトになりました。

    ちなみに「やすけ」は、一般に利用可能な宿泊施設で、水道、冷蔵庫、ガスコンロ、食器などの設備があり、食材を持ち込んで料理することができます。近隣には他にコテージ等の宿泊施設があり、今回のスタッフや参加客はそれらを利用しました。

    野菜を洗い始めたのはアイーダのスタッフさんと、ご夫婦でヘルプにいらしていた「藏光農園」の藏光さん。お客さんの入る座敷では、有田川町の方々が電球を外したり、会場作りを進めます(職員さんや内装デザイナーさんなど、さまざまな職業の方が一緒になって会場を作っていっていました)。

    厨房では食器や料理の細かな部分の決定もどんどん進められていきます。

    • ピーマンを使う料理のアイデアを急きょふられた小林シェフ。頭の中はピーマンでいっぱいのようでした。

    円柱状に冷やし固めたオパリーヌ

    皆さんひとまず落ち着いたところで、お昼休憩。昼食は有田川町の方々が準備をしてくださっていました。大きな鍋で素麺がゆでられ、テーブルには錦糸卵や鶏肉、トマト、キュウリなどの具と、たっぷりの薬味が並びます。

    調理台では湯気の立ったバットに半身の魚がのっていて、町の女性人が熱々をほぐしていました。聞くと、有田川の郷土料理、サバごはんにするそうです。

    • 内陸の土地らしく、塩蔵にしたサバを、野菜や昆布と一緒にお米と炊き上げ、ほぐしてご飯に混ぜ込みます。

    • できあがったサバごはん。とくに調味はせず、サバと昆布から出る味で美味しく仕上がるのだそうです。

    • 箸休めも手作りで、キュウリの漬物と、イタドリの炒め物。イタドリがたくさんとれたら、たっぷりの塩に漬けて冷凍保存し、適度に塩抜きして使うそうです。奥様方は「今日はちょっと塩抜きすぎちゃったね」と笑っていましたが、さくさくとしてほんのり酸味を感じ、サバごはんと一緒に美味しくいただきました。

    • 素麺はそれぞれに好みの具をのせて、ぶっかけに。

    • 気温が高い中、有田川の冷水でよく締められた麺はのど越しがよく、みなさん勢いよくすすり、おかわりをしていました。

    昼食を終えてやすけに戻ると、会場設営と仕込みの続きです。

    会場は、5月に下見に来たときとは、別の空間になっていました。

    • 畳の間にテーブルが運び込まれ、縁側には涼しげなカーテンがかけられていました。

    • テーブルには有田川町の伝統和紙、「保田紙(やすだがみ)」が使われています。料理を照らすよう中央に照明を配したデザインで、天井などに灯りがなくても会場の明るさを保てるように設計されていました。中の電球はLEDを使うことで、オープンエアで夜間に使用しても虫があまり寄ってこないのだそうです。テーブルセッティングには有田川で生産される棕櫚縄やぶどう山椒が使われます。

    シェフたちは仕込みの続きです。

    • 楠田シェフは、アミューズに有田川で捕獲された鹿のゼリー寄せを用意。仕上げを考え中のようでした。

    • 地元の日本酒には黒文字の葉の爽やかな風味を移します。

    • 川でとれるアマゴ(写真)は小林シェフが担当。アユもあり、そちらは川手シェフが担当します。

    厨房の水道の横には湧水が常に流れていて、手を洗うととても冷たく心地よく感じました。

    仕込みが一段落すると、息つく間もなく試食の時間に。地元の方にイベントの料理を食べてもらいます(事前に役場を通して呼びかけをしてありました)。

    試食はアミューズを中心に数品でしたが、中にはメニューには使わないソーセージもありました。小林シェフは、イベントの料理だけにこだわるのではなく、足を運んだ有田川の方々に少しずつでも楽しんでもらいたい様子でした。食材の生産者の方もいらしていて、そのときの小林シェフは少し緊張した面持ちでした。

     

    その後、有田川町や地元新聞社などの取材があり、アペリティフ会場のチェックをし、この日のスケジュールは終了。

    本番を前に、シェフの皆さんはリラックスした様子でした。

    夕食を終え、宿への道を歩きながらふと空を見ると、星で覆いつくされていました。明日は晴れそうです。

     

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