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    Feature特集

    富山県 氷見のブリを使って Vol.1

    以前、当サイトの氷見漁港取材に同行していただいた、六本木「ル スプートニク」の髙橋シェフ(漁港取材の記事はこちら)。氷見の名物でもある冬のブリは、シェフの地元福岡では、お雑煮に使う身近な素材だそうです。今回はそのブリで、2皿作っていただきました。1品はほんのりあたたかい軽めの料理。もう1品は、厚切りを香ばしく焼き上げたボリュームのある一皿です。

    PHOTO: MASAKO KAKIZAKI

    「鰤のスモーク 玉葱とレフォール」

    1品目は、瞬間スモークで加熱し、香りをまとわせたブリ。レフォールの辛みをきかせた玉ネギのピュレを合わせています。

    クロッシュ(ドーム状の蓋)にスモークをためて、客席で煙の中から料理が現れる演出を楽しんでもらいます。

    編集部――このブリは、氷見のブリですね。

    髙橋――はい。他の産地のブリを使うこともありますが、やはり氷見のものは脂がのっていて美味しいと思います。

    編集部――お料理のポイントはどんなところでしょうか?

    髙橋――これは、生ではなくて、煙で50℃手前くらいまで火を入れています。そうすると、ほぐれるほどではないのですが、強い弾力がある状態から、ナイフが入りやすく、ソースともなじむようなしっとりとした質感になります。もしブリの脂が少なすぎると、火を入れたとしても、かたくて、ぱさぱさになります。こうしたスモークで火を入れる方法だと、脂がのっている身のほうが適していると思います。

    編集部――ブリの処理はどのようにされていますか?

    髙橋――内臓とウロコを取って、腹に紙をあてて、0度前後の冷蔵庫で1週間ほどねかせます。その後おろしてゲランドの塩を強めにあてて40分おき、氷水で洗い、脱水シートではさむ。ポーションにカットして常温において、瞬間スモークをかけ、提供です。

    編集部――ねかせる目的は、うまみですか?

    髙橋――そうです。でも難しいんですよね。ねかせると青魚っぽいにおいが出てくる。それが気になるのでスモークをかけています。

    編集部――玉ネギ、レフォールとの組み合わせについて教えてください。

    髙橋――もともと、魚のカルパッチョなどでもフレンチは塩で締めることが多くて、塩味がきいています。さらに今回は、ねかせてうまみが増えているわけで、自分はそうした魚は生ハムに近い組み合わせにすることが多いです。生ハムはフルーツと相性がいいじゃないですか? よく、モモとか、メロンとか、洋ナシとかでも美味しかったりする。

    編集部――お店の定番のアミューズも、ねかせたアマダイにフルーツを巻いていますね。

    髙橋――ええ。ただ、今回はフルーツだと少し甘すぎてしまうので……ブリの脂が甘いじゃないですか。だから、その脂を、辛さで和らげたいなというので、玉ねぎのピュレにレフォールをきかせて。ちょっと脂を食べやすくするところを狙っています。

    編集部――フルーツではなく玉ネギくらいの甘みということですね。

    髙橋――そうですね。

    編集部――ピュレはどのように作っているのですか?

    髙橋――玉ネギを薄切りにして鍋に入れて、フルール・ド・セルをふります。オリーブオイルをまわしかけて蓋をして火にかけ、水分が出てきてやわらかくなったらミキサーにかけます。このとき、レフォールのすりおろしを大量に入れます。酸味も欲しかったのでシェリーヴィネガーのヴィネグレットも入れています。シノワで漉して出来上がりです。

    編集部――レフォールを、大量に?

    髙橋――なかなか辛くならないんですよ。しぼり汁をいれたり、いろいろやってみたんですけど。今回は玉ネギをレフォールのすりおろしと一緒にまわして、仕上げにもレフォールのしぼり汁を入れています。しぼり汁にするのは、繊維が粗いからです。

    • ブリの上には、トマトの透明なジュレ、レッドソレル(酸味のある葉)。仕上げにエクストラヴァージンオリーブオイルをたらす。

    編集部――取材前に、ぶりは難しい素材だと言っていましたが?

    髙橋――もともと得意なのは、火を(もっと)入れる料理です(苦笑)。なので、もう一品は、火を入れたものです。

     

    つづきます。