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    Feature特集

    富山県 氷見のブリを使って Vol.2

    以前、当サイトの氷見漁港取材に同行していただいた、六本木「ル スプートニク」の髙橋シェフ(漁港取材の記事はこちら)。氷見の名物でもある冬のブリは、シェフの地元福岡では、お雑煮に使う身近な素材だそうです。今回はそのブリで、2皿作っていただきました。1品はほんのりあたたかい軽めの料理。もう1品は、厚切りを香ばしく焼き上げたボリュームのある一皿です。

    PHOTO: MASAKO KAKIZAKI

    2品目は厚切りのブリを塩、オリーブオイル、ハーブでマリネして温かい場所に置き、仕上げに表面を強く焼きつけます。ソースは焦がしバターで、レモンをしっかりきかせたもの。つけ合わせは黒大根のソテーです。

    「ブリのロースト 焦がしバターのソースとハーブ」

    編集部――こちらのブリは、先ほどと比べてずいぶん厚いですね。

    髙橋――はい。ブリを食べてるという感じが欲しくて。

    編集部――厚みで、独特の食感も引き立ちますね。噛むとむちっとしているのですが、そこまで強い抵抗があるわけではなく歯が入っていく感じでした。

    髙橋――ブリは繊維が細かく脂が多い魚です。そのため、生だからぶにょぶにょするとか、火が入りすぎるとパサつくということも少なく、美味しく感じるストライクゾーンが広いんですよね。そのストライクゾーンの中で、生に近いときと、より加熱したときの美味しさのどちらも狙うというか。火が入っているけれども、パサつかず、ほぐれすぎず、でも歯切れをよくしたいという火の入れ方をしています。

    編集部――どういうふうに火を入れているのですか?

    髙橋――ずっとそこ(火口の上の棚)に置いているだけです(笑)。

    編集部――すみません、それではよくわからないです。

    髙橋――いや、同業の方に聞かれることもあるんですけど、でも置いてるだけなんです。うちでよく出しているシカも、火入れについて聞かれますが、「(ココットの中で)コロコロしてる(転がしている)だけなんだけど」って(笑)。

    でも、どちらも理論上は、(ある程度の温度まで上げて、)最終的に焼き色をつけて、香ばしさを与えて繊維を断ちきる作業をするというのは一緒です。

    だから、香りとか、水分の損失が少なく、ぎりぎりまで保たれている。で、最後に火を強く入れることで、切った時に断面がジュワーっと、流れないくらいに肉汁が出てくるというのは理想としています。

    ……どの調理場にいても、場所ごとの温度を確認して、(魚や肉が)このくらいの厚さだったら、ここらへんで何分おけばこうなってというのは、火口経験が長いのでわかるので。

    編集部――焼く前は、だいたい何度くらいなのですか?

    髙橋――50℃までいっていないと思いますけどね。(棚の)上で入れる分は。40℃台でもけっこう火が入ってしまうことが多いので。38~45、46℃くらいの間で保っておいて、最終的には50℃を少し超えればいいかなと。

    髙橋――肉もそうなんですけど、中心温度は(焼きすぎになるため)熱々にはできないので、結局は一番最後に香りをバーンとつけるように焼いて、その勢いでいくほうが熱く感じるんです。それはもう、徹底しています。そうしないと、「ぬるい」で終わってしまう。ねかせるっていうのも大事なんですけど、ジュ(肉汁)が落ち着いてあんまり熱そうじゃないというのは絶対に嫌なんです。温めなおしてジューシーさを引き出します。

    編集部――今日はフライパンで焼いて一度オーブンに入れて、その後グリヤードで焼いてからもう一度オーブンに入れていましたね。

    髙橋――あそこで微調整していて、若い(棚上での火の入り方が浅い)ときはそのぶんオーブンに長く入れたりします。

    だいたい二段階で、今日みたいにフライパンで全面を焼いて、焦げ目をグリヤードでつけるというパターンが多いです。

    本当は薪とかがいいんですよ。うちには今ないですが、薪で火を入れると、煙とか、肉(魚)のまわりの空気で香りがつきますよね。よく、仕上げは炭で焼いたんですかって聞かれます。それは、あれだけ焦げ目をつけているからだと思います。だから営業中、けっこう煙すごいですよ。アニョー(仔羊)とかになるともっとモクモクになって、お客さん、(ガラス越しに見えて)笑ってます。「なんか、調理場がすごいことになってる!」って(笑)。

    編集部――二段階、フライパンとグリヤードで分けているのはどうしてですか?

    髙橋――フライパンは皮目をパリッとさせるのが目的です。ただ、そこでずっと焼いていても、あんまり焦げはつかない。香ばしさはグリヤードです。

    編集部――今日はカマと、ブリの・・・

    髙橋――腹のほうです。1本でとったりするので、お客さんによって出る部位は変わります。カマもすごくおいしいですよね。ジューシー。好きな部位です。うちのお店はナイフとフォークで食べるので(カマは骨があるため)ちょっと出しづらいですけど、お得意様に出したりします。喜んでくださいますね。

    編集部――部位や脂ののりかたによって、焼き方はどのように調整するんですか?

    髙橋――ハラミやカマは、脂を落とす、までいかないですけど、かなり香ばしいほうが、絶対的にしつこくならない。それは意識します。逆に背のほうは脂が少なくてパサつきやすく、ストライクゾーンが狭くなるので難しい部分があります。でも、部位もそうですが、脂や身質に関しては個体差も大きいですね。天然ものなので、ジビエと同じです。

    編集部――ブリは焼く前にどういう処理をしていたのでしょうか?

    髙橋――焼く前は塩胡椒して、香草、オリーブオイル。で、火口の上の棚に置いておきました。香草はディル、セルフィーユ、エストラゴン、イタリアンパセリです。

    編集部――ソースはけっこう酸味がありますね。

    髙橋――ええ。レモン汁が。今日はけっこう脂が多い部分を使ったので、酸味は立たせています。

    • ソースは焦がしバターをレモン汁でとめて、エシャロットを加えて煮るように加熱し、仕上げにハーブを加える。最後にレモン汁をさらに加え、熱々をブリに添える。

    • ハーブを盛り、レモンの皮をおろしかけて提供。

    ブリのローストは、ブリの骨からとっただしでスープ仕立てにすることもあるそうです。

    しっかり脂がのっている、冬の氷見ブリの美味しさをいかした料理2品でした。

    髙橋シェフ、ありがとうございました。

     

    氷見の漁港取材の記事はこちら
    特集「富山県 氷見 Vol.1」