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    Feature特集

    インタビュー 小林寛司 有田川町「G.G.プロジェクト」をふりかえって 1

    和歌山県岩出市「ヴィラ アイーダ」のシェフ、小林寛司さんが中心となって、同じく和歌山の有田川町で行われたイベント「G.G.プロジェクト」。編集部は後日、小林シェフにインタビューを依頼しました。

    編集部――小林シェフ、有田川のイベントお疲れさまでした(準備と当日の模様はこちら)。改めて今回のイベントを立ち上げた経緯と、終わった今、シェフが感じていることを伺いたいと思います。

    まず、最初のきっかけは有田川町の特産品の「ぶどう山椒」について、小林シェフが登壇するシンポジウムがあったと伺いましたが?

    小林――はい。僕の他にも、京都の和食の方(料理人)や地元の山椒生産者の方などが集まって、それぞれに、ぶどう山椒と、有田川町のもつ魅力について話しました。

    編集部――どのような方が聞きに来ていたのでしょうか。

    小林――有田川の地元の人です。農家さんとか、援農(※)に来ている人とか、そうしたことに関心のあるカフェのオーナーさんとか。意外と人が集まっていて、みんな関心があるんだって思いました。

    ※援農…都市部の住民などが短期間農作業の補助をすること。

    編集部――それがどのように今回のイベントにつながっていったのですか?

    小林――その会のあと、有田川町の役場の方からいろいろな話を聞くことができたんです。山椒農家さんに後継者がいないことや、地元の高校(有田中央高等学校清水分校)が廃校になってしまうかもしれないこと。それをなんとかするためには町の魅力を発信する必要があるけれど、どうやったらいいのか。何が問題なのか。それで、僕らであれば、こういう(今回のイベントのような)ことができるんじゃない、っていう話をしたわけで。

    編集部――今回の特徴のひとつとして、高校生が参加していることがあると思います。イベントと高校生が結びついたいきさつをもう少し詳しく教えてください。

    小林――廃校の話を聞いて、どうしたら、そうならずに済むかっていう。僕は母校が小、中、高校ともまだありますけど、なくなっちゃうって考えたらさみしいですし、そこから小さくなっていきますよね……(人が減ってしまう)。じゃあ、全国から生徒を集められるような魅力のある高校を作ればいいんじゃないか、それには、何かに特化したほうがいいよねって。たとえばいろいろな授業。机に向かう授業だけじゃなくて、料理とか、音楽とか美術とか。

    編集部――五感をはたらかせる授業ですね。イベントの終盤で高校生に向けて、「映像として残る経験」についてお話しされていましたが。

    小林――そうそう。ふとしたときに思い出す映像。僕の頭には、子供のとき、家の壁を赤と青のペンキでぬった映像。台所でお菓子を作った映像。自転車のホイールの細い部分(スポーク)を切って、ベコベコに曲がって怒られた映像。いろんな経験が、映像と一緒に残っています。教科書とかで勉強したいろいろな「知識」が、大人になっても残っている「経験」と合わさると、こう……いろいろな力が出てくる。生きていく力もそうだし、会社で新しい企画を生み出す力もそうだと思うし、人それぞれ、いきてくるところが違うと思うんですけど。

    編集部――今回のイベントでは、高校生の中にどんなイメージ(映像)が残るといいな、と思いましたか?

    小林――「高校生のときに、東京からシェフがきてこんなんやったよなあ」っていう、淡い記憶だけでも残ってくれれば。「あのときなんで来たのかな、そうだ、有田川の山椒だ。山椒を使って何か作ってたんだ」みたいな、うっすらとした記憶。

    編集部――それが大人になったときにいきてくると。

    小林――ええ。そのとき自分のもっているものとリンクしたら、新しく何かが創造できるかもしれない。そういう映像が、残ればいいなって。

     

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