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    Feature特集

    インタビュー 小林寛司 小林シェフの修業時代 3

    小林シェフが料理の修業を始めた頃の思い出を伺います。

    小林――フランスのリヨンにも2か月くらい行ったんですけど……その前に働いていたイタリアのレストランのシェフが、フランス人だったんですよ。イタリア好きなフランス人。イタリアではけっこう、イタリア好きのベルギー人とかヨーロッパ人が多くて、シェフをやっていることが多いんです。で、そのシェフが、「絶対フランス行ったほうがいいよ」って紹介してくれたんです。

    そのリヨンの店は、プーレ・ア・ラ・クレーム(若鶏のクリーム煮)とか、クラシックな料理をやってるところだったんですけど、まかないがね、少なすぎて。給料はないし、まかないが、サラダだけなんですよ。

    編集部――えっ。

    小林――シェフとマダムとサービスの人とかがいて、皆で一緒に食べるんですけど。マダムがね、サラダとパンと、肉と、魚とって、なんかいろいろと食べてるんですよ。でも僕らにはなんもなくて。すごくおなかすくし、休みの日もお金がないから、スーパーでバケット1本買って、1日過ごすみたいな。

    編集部――学生みたいですね。

    小林――そう、まさに。で、お金の限界がきたんで、2か月でイタリアに。イタリアではね、休みの日すごく心配してくれて、「帰ったら調理場のものなんでも食べていいよ」って言ってくれたり、お小遣いくらいの金額ですけど給料もくれたりしてました。だからもう、イタリアに戻ろうと思ってお店を探して、フランスの公衆電話から電話して、働かせてくれって。

    編集部――ずいぶん事情が違いましたね。それでさらにイタリアを好きになったりしましたか?

    小林――うーん、というか、「やっぱりイタリアがいい」というか(笑)。

    編集部――(笑)。

    小林――でも、イタリアからフランスに行ったとき、ミラノから電車で行ったんですけど。リヨンに着いてとりあえず食事に入った店で、パンとワインがめちゃくちゃ美味しかった! 予約もせずにぷらっと入ったところでね。僕、これ、ずっと言ってるんですけどね、マコン・ヴィラージュ(ブルゴーニュ南部のワイン)とバゲット。

    イタリアの安いワインは本当に(味的に)飲めないし、パンも美味しくない。パンとワインの底辺が、フランスは明らかに上だと思いました。ただ、コーヒーはイタリアがうまい(笑)。サラミと生ハムもイタリアがうまい。でも、パテとかはフランス。ソーセージはイタリアかな。

    編集部――それも経験から言えることですね。……イベントの話に戻ります。今回は有田川でしたけど、日本各地で、その土地のものを使って地元を盛り上げていく動きはありますね。これは個人的な考えなのですが、どこが一番だと競うことではないのかなと思うのですが。

    小林――それはまさにイタリアで、みんながそれぞれ、「自分たちが一番」って思ってたらそれでいいんですよ。たとえば東京で名が知れようが、どうでもいい話。……まあでも、認知はされたいかな。認知は必要かもしれません。どこか一番というよりは、たとえば、和歌山は桃の生産量が多いのですが、「和歌山でもいい桃作ってるよね!」みたいな。認知があると、気持ちに余裕ができるというか、落ち着くというか。勝ってるとか負けてるといった話ではなく、お互いいいのやってるよね、ぐらいの気持ち。

     

    横道インタビュー「小林シェフの修業時代」終わり

     

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