料理人を通して見る、知る 食の世界「キュイジニエ・オンライン」 CUISINIER ONLINE

    Serial連載

    手島 純也連載 フランス古典料理

    Vol.2  フランス三大料理人の時代 後編(1/3)

    三大料理人の時代の料理から、エクルビスのグラタン、マスのムースのお話です。

    PHOTO: MASAKO KAKIZAKI

    編集部――エクルビスのグラタンは、今回は辻静雄さんと、ジャン・デュクリューさん(アレクサンドル・デュメーヌの弟子のひとり)の本を参照されていましたね。

    手島――はい。ただ、作り方は再考して、現代的に仕上げています。

    辻さんのレシピでは、エクルビスをソースの中で煮込んでいます。この方法ですと、一体感はうまれると思いますが、1/4量に煮詰めるとなると、かなり長い間グツグツと煮ることになります。そうするとソースに味が全部出てしまい、身がパサパサになるだろうと予想されます。そのため、今日はエクルビスは殻を外すためにブランシール(表面に火が入る程度にゆでる)するのみで、ソースは別に作って身を美味しく食べてもらう感じにしています。ソースの軽さも、今作るのであればと考え、少し変えました(詳しくは後述)。

    そうした意味では、ジャン・デュクリューのほうが、レシピに忠実に作った場合、(現代の味覚で)美味しいと感じるのではないかと思います。エクルビスと、ソースを別に作っていますね。

    エクルビスのグラタンはポワン(ピラミッド)の名物料理でもありました。今回、フェルナン・ポワンとアレクサンドル・デュメーヌのレシピも見ましたが、大きな相違はなかったと思います。もちろん、細かいところ、レシピに現れない部分に個性があったとは考えられますが。

    ホウレン草のシフォナードも、僕は丸めましたが、それも決まっているわけではない。写真で見る限りでは、もしかしたらフェルナン・ポワンのほうは入っていなかったかもしれませんね。

    編集部――このグラタンは、その時代の人によく作られていた料理、ということでしょうか?

    手島――そうです。当時の、料理人の間で共通してあった料理ですね。

    編集部――三大料理人と言えば、アレクサンドル・デュメーヌとフェルナン・ポワンのほかに、アンドレ・ピックがいますね。代表的なお料理はあるのでしょうか。

    手島――トリュフのショソンや、ヴェッシーですかね……ただし、それはポワンもデュメーヌもやっています。

    編集部――当時は同じ名前の料理が、いろいろなシェフによって作られていたのでしょうか?

    手島――そうです。今はみんな違う料理を作っているから、比べづらいじゃないですか? でも当時はみんな同じものを作るから、その中の差異で、逆に言えば、料理が比べられたわけです。「これは俺の方がうまい」「この料理はあっちのシェフのほうがうまい」で優劣をつけられたわけです。

    つづきます