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    Serial連載

    川手 寛康連載インタビュー Portrait

    Vol.5  2016年9月 アジアのシェフとの交流 (3/3)

    神宮前「フロリレージュ」のシェフ川手寛康さんに、国内外でのご自身の活動について、編集部が伺ったお話を中心にお届けする連載です。

    台湾、韓国、シンガポール、フィリピンなど、アジアのさまざまな国で精力的にコラボレーションイベントを行った2016年。そのひとつ、韓国のレストラン「Mingles(ミングルス)」とのイベントのお話を中心に伺いました。

    「フランス料理」か「イノベーション」か

    ――食材的には、海外はいかがでしたか?

    日本はやはり、食材に関しては恵まれています。処理の仕方をとってもそう感じますね。

    ――シェフのところに届くまでに施されている処理ですか?

    ええ。あと、扱い方も、ミングルスのシェフには「僕とは大きく違う」と言われました。食材のアプローチの違いがあるって。どこが、というよりも、根本の食材の質の違いがある中で、トータルな部分のような気がします。僕から言わせればそんなに違わないと思うんですけど、ずっと興味をもって見ていましたね。

    ――ミングルスさんのジャンルは?

    韓国料理です。

    ――ベースにしている調理技術が違うということもあるかもしれないですか?

    うーん、正直なところ、テクニックはあまり関係ないと思います。とくにイノベーション料理では、どちらかと言うと、食材に対してどう感じてどう仕立てていくかが重要で、彼もそう考えていると思います。どういうふうにするから、ここをこう処理していく。そのプロセスの考え方が違うように感じたんじゃないかなと思う。

    ――川手シェフはイノベーションですか?

    いや、全然思っていないですよ。フランス料理です。ただ、まわりの人にイノベーションと言われても全然いいんです。実際作っているものはイノベーションに近いもので、土俵はイノベーションで戦っているつもりでやっています。

    でも、フランス料理ですかっていわれたら、フランス料理ですって100%答えるんです。それは、僕が20年近く料理人をやっていて、そのほとんどの時間を、フランスというものに憧れをもって、フランス料理人、グランシェフを憧れにしてやってきています。

    あなたのベースは何ですかと言われたときに、僕のはフランス料理でしかない。結果としてイノベーションになっているかもしれないけれど、僕の中の大部分はフランス料理だと思っています。でも、皆さんがどう思われようが、イノベーションだと言われようが、それも正解だと思っています。

    ――ずいぶん前の取材記事を読んでもそのように答えられていました。

    もう、ほんとうにそれ以外答えようがないです。

    個人の価値観を感じさせる「イノベーション」料理

    ――料理に境界がなくなってきているとよく言われます。「何料理」というよりは、「誰の料理」といった流れになってきているとも聞きますが、それについてはどのように考えていますか?

    イノベーションってなんだ、という話です。創作とか、いろいろな言われ方をしますけど、そうではない。パーソナル、個人料理なんです。創作料理という名前をつけるからみんな嫌がるわけで。

    僕たちは、「フランス料理」と言いながら日本を表現しようとして、そうすると、なぜ、「和食(的なアプローチ)」を使わないんだ、という話になる。

    でも、「和食」の土俵で世界で戦おうと思うと、評価されないんです。イノベーションという、自分のフィルター、個人としての料理で戦っていくことが、世界の人とやっと肩を並べて戦っていけるという感じなんです。

    「和食」(など「○○料理」のアプローチを取り入れたのみの料理)だと、「和食(あるいは○○国の料理)」ってすばらしいね、で終わってしまう。

    個人としての価値観を彼らと同じ土俵で感じて(また、感じさせて)、「こいつ半端ねえな、こいつ何料理なんだ、日本のベースだけど、こいつはすごいフィルターをもっている」と思われないと、世界で認められないのではと感じています。

    これからそうした感覚をもつ料理人が出てこないと、イノベーションというものは日本で根づかない。

    今(取材時)日本では、ミシュランで「イノベーション」で掲載されている店は、うちを含めて3店。

    とても少ないですが、戦うために、イノベーションであることは重要だと思います。旨いものだけ作っていればいいというのは、僕の今のあり方とは違います。

    僕はフランス料理がベースですが、イタリアンでもすごい人はいるし、若い人たちの中に、同じ感覚を持っている人もいたりして、日本に帰ってきてやろうとしている。

    ――今年、この後はどのようなご予定ですか?

    9月末から10月頭、ベルギーとオランダをまわってきます。ベルギーではHeltog Jan(ヘルトクヤン)という、ミシュラン三つ星で、ワールド50にも入っている お店で料理を作ります。

    11月にHeltog Janがうちでフェアをやって、12月にRAWの3人がうちで研修。アジア50に入っていたら、1月にタイでフェアです。入っていればの話です。

     

    Fin.

     

    次回はヨーロッパのレストランとのコラボレーションについて伺います。