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    Serial連載

    川手 寛康連載インタビュー Portrait

    Vol.1  2017年12月 ミシュラン、トルコ料理学会 (1/3)

    神宮前「フロリレージュ」のシェフとして、国内外のさまざまな活動を通じて自らのメッセージを発信している川手寛康さん。この連載では、川手シェフが何を考え活動を続けているのか、編集部が伺ったお話を中心にお届けしていきます。第一回は、2017年末、フロリレージュがミシュランガイドブックで二つ星を獲得した直後のインタビュー内容です。

    ミシュランガイドブックの変化

    ――ミシュラン二つ星、おめでとうございます。

    ありがとうございます。(同じく神宮前の)傳さんもとりましたね。

    ――今回、その傳さんの二つ星もあり、ミシュランとワールド(ベストレストラン)50(※)、何を評価するのかという点で近づいているように感じましたが、いかがですか?

    ※飲料メーカー「サンペレグリノ」等によるレストランを対象としたアワード。2017年はフロリレージュ、傳ともに50位以内にランクインした。

    ミシュランはびっくりしましたね。フロリレージュは、いつかは二つ星をとりたいと思ってやってきました。「フランス料理」の店として。……うちは一昨年まで「イノベーティブ」の枠だったのですが、やめてもらえるように言ったんです。イノベーティブだと思われているかもしれないけど、僕はフランス料理だと思っていると。そしたら、去年から「フランス料理」に戻ったんですよ。

    うちの店は、(料理や店のあり方が)今までのミシュランが評価してきたラインから大きく外れてはいないと、僕は思っています。でも、傳さんはそこからけっこう外れているなといつも思っていて。悪い意味ではないのですが、ミシュランのラインにはのっていないんじゃないかなと。今まで、ミシュランの和食枠で評価される対象に、傳さんのような店はなかった。でも、今回(傳の)長谷川さんがとった。傳さんは(ミシュランでの料理のジャンル分けが)和食ではなく、イノベーティブになったのですが、だからこそ二つ星をとれたのではと思います。

    (今年の星の動きを見ると)今までになかったラインができたんですよね。もしかしたら僕も片足を突っ込んでいるかもしれないですが、その新しいラインは、確実に、今までの(旧)ミシュランは持っていなかったところかなと僕は思っています。そこの部分、ワールド50のラインと、評価がかぶっているところが出始めたというのは確かだと思います。

    先日、バンコクのミシュランが発表になったのですが、バンコク版に関しては、堅実だと思います。日本の旧ミシュランみたいなところが、今はまだ、評価基準になっているかなと感じることはあります。

    ――ミシュランは国によって評価基準が違うのでしょうか。

    違いますよ。やっぱり、文化という部分を取り除くことはできないです。地域に密着している文化を評価基準の中に入れざるを得ないと思います。だから、今のフロリレージュをバンコクでやったら、何星になるかはわからないです。バンコクはバンコクなりに、日本は日本なりにでいいんじゃないかと思います。だからやっぱり、フランスのミシュランはフランスなりに、じゃないですか。

    フランスのミシュランは、僕の中での基準値です。あの赤い本を持ってフランス中を食べ歩いていたので。これが三つ星、これが二つ星って、自分の中にも(感覚が)ありますし、その基準を脱さないですよね。新しいラインを作らず、つねに同じラインを守り続けているので、さすがだなと僕は思っています。

    ――川手シェフは、アジアやワールド50にランクインもされ、かなりの数、国外でのコラボレーションをこなされてきたかと思うのですが、今改めて思うことはありますか?

    んー……だいたい、同じことを思うんですけど、僕たちがコラボレーションをしに行くのって、その場所、その土地、そのシェフを知るということなのですが、僕は言葉が流暢ではないので、料理、食材でしか対話ができないんですよね。人によってはコラボをただの仕事にしか思わないかもしれないんですけど、僕たちは、会話をしに行っているようなものなんですよ。相手のシェフの考え方を知り、その土地のことを知る。海外まで足をのばしてその場所でやるコラボの最大の意味は、そこしかないんじゃないかと思いますね。

    ――新しいことを知ることに積極的ですね。

    人生を豊かにする部分で、知識、新しいものを得るというのはどうやっても切り離せないものです。自分自身が幸せになりたい、充実した生活を送りたいと思えば、新しいものをインプットしていくということは、すごく重要なことです。

    アウトプットするというのは、過去に何かを残していくということ。それも重要なんですけど、どっちかというと未来のことを取り入れていくということのほうが……。どちらが重要かといったら、僕はインプットのほうが重要だと思います。

     

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