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    Serial連載

    川手 寛康連載インタビュー Portrait

    Vol.1  2017年12月 ミシュラン、トルコ料理学会 (3/3)

    神宮前「フロリレージュ」のシェフとして、国内外のさまざまな活動を通じて自らのメッセージを発信している川手寛康さん。この連載では、川手シェフが何を考え活動を続けているのか、編集部が伺ったお話を中心にお届けしていきます。第一回は、2017年末、フロリレージュがミシュランガイドブックで二つ星を獲得した直後のインタビュー内容です。

    東京のレストランと地方のレストラン

    ――フロリレージュさんは東京の真ん中でお店をされていますよね。一方で、このサイトでも取材をしている「ヴィラ アイーダ」の小林シェフは、いわゆる地方、和歌山でお店をされています。先ほどお話されていた役割分担という点で、東京と地方について、どのように考えていますか?

    完全に役割分担ですよね。……今、「地産地消」という言葉があるじゃないですか。それは、素晴らしい武器なんですよね。彼ら(地方のレストラン)にとって。地方に(店が)あり、その言葉が使えて、特色を作れるわけじゃないですか。それって、料理人にとってうらやましいことで、大きな特権だと思います。

    僕は東京生まれで、東京以外で育ったことが一度もなくて、東京のことしか知らない。でも、だから、東京なりのいいところを理解している。なんで僕が東京の、わざわざど真ん中まで来てレストランをやるかって言ったら、やっぱり、地方にない強みって、きれいな言葉ではないですけど、情報だと思います。情報の発信であり、受け取り。それが一番集まるのって、どう考えても東京です。

    世界中の人が食べに来てくれる、世界中のシェフたちが集まってくる場所。それは、都心だと思うんですよね。表参道、青山、神宮前。とてもアクセスがいいですし、それだけ、僕のやっていることを世界中の人に知ってもらえる。これ以上ない武器だと思っています。

    地方でレストランをやっているシェフは、地産地消というものを持ち、志を持った生産者とのつながりも深く、それを自分の店で伝えている。それは素晴らしい活動だと思います。僕は、情報という武器を持っているので、そうしたシェフたちのことを発信して、いろいろな人に伝えています。それも、僕の武器だと思っているんです。情報を発信するって言う部分で。お互いの武器があり、それは言葉を変えれば、役割分担だと思うんですよね。

    今フロリレージュがここまでこれているのは、東京じゃなかったらできなかったんじゃないかなと思っています。彼ら(地方レストランのシェフたち)が地元の素材を使うのと、僕が情報を使っているのと、同じことなんじゃないかと思う。

    ――小林シェフの取材を数か月前からさせていただいているのですが、たとえば、ひとつの素材がひとつのお皿の中で、いろいろな形になって使われていたりしますよね。そういうお料理が、東京で出てくるのと、和歌山のあのお店で出てくるのって、意味が違うんだなと思ったんです。どちらがいい、ということは別にして。

    全然違いますよ。そうした料理とまったく同じものは、僕たちはできないんです。なかには「東京のシェフもそういうものをつくっていけばいいのに」っていう人もいるかもしれないですけど、東京はそうではないと僕は思う。東京で、生産者の人にスポットをあててやっていくっていうのも、それはそれで、いいと思うんですよ。でも、東京にいながら地方にばかり目を向ける人が多いように思います。東京だって素晴らしい街だって思うんで。僕はね。東京の中で地区の独自性に目を向けて、情報を使いながらうまくやっている人もいますし。……神宮前で表現するもはなかなかないですね。球場くらいしか(笑)。(自分の置かれた環境で)情報をいかに武器にしていくかっていうのは、考えます。

     

    Fin.