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    Serial連載

    川手 寛康連載インタビュー Portrait

    Vol.4  2016年8月 アジア・ワールド50 (3/3)

    神宮前「フロリレージュ」のシェフ川手寛康さんに、国内外でのご自身のさまざまな活動について、編集部が伺ったお話を中心にお届けする連載です。

    第4回は、2016年、フロリレージュが「アジアのベストレストラン50」(※)で「注目のレストラン賞」を受賞した年の、8月のインタビュー内容です。

    ※飲料メーカー「サンペレグリノ」等によるレストランを対象としたアワード。

    料理人として大切にしていること

    ――経営において、「賭けてみる」ということはありますか?

    ギャンブル性はありますけど、負けると思ってやっている人はないじゃないですか。僕は勝てると思ったことしかしない。やれると思った規模のことしかしないし、絶対に食って行けるって思えることしかやらない。お客さんが来るって思わなかったらこの店も作らないし。やって、「やべっ」て思うことはありますけど(笑)。自分の想像とちょっと違った、こっちの方向性だったのにっていう。でも、そこで修復ができるから、どうにかなるかなって。そういう微調整はしていきますけれど、それは、ギャンブルとは違う。

     

    ――勘づくセンスも大切ですね。

    それがない人は社長をやらないほうがいいと思う。ただ、みんな感覚が違うので。僕が見ておかしいなって思っても、絶妙なバランスの人もいるし。結果に何を求めているかですよね。たとえば僕のお店は、絶対的なお金にはつながっていない。他の社長から見たら、「あなたはおかしいよ、そのバランス感覚がくるっている」って思われているかもしれない。でも僕は、今すごく充実している。これがやりたかったからこうなっているんだっていう実感もある。何をよしとしているかだと思います。

    僕は仲間がいて、いろいろな人と話したり、一緒に食事をしたり飲んだりするのが好きだから、友達が増えるのはすごく重要だし、もちろんその中には重要なことを話せる仲間がいるし、僕はそういうことのほうが自分の人生のなかですごく重要で、意外とお金なんて、死んでもどうせ持っていけないし。一番最後に持っていけるのはなんとなく、幸せだった時の思い出かなーなんて思ったりします。

     

    ――かっこいいですね。

    そういうものじゃないですか? 今何か欲しいと思った時に、絶対に買えないものって何かっていったら……美味しいワインくらいなら買える。僕、物欲はそんなもので十分です。高級外車乗り回したいとか思ったことないし、チャリンコで走るので十分。「海外に行くのはお金がかかって、むしろマイナスになるのに、それなら毎日店をやったほうが儲かるじゃん」なんて言われることもありますけど、儲かるのは後からでいい。そんなに儲けたいなら、料理人をやっていない。という考え方です。料理人としての幸せ、人生の幸せのスタンスが、そこです。

     

    ――素敵だと思います。でも、そうはおっしゃってもやはり、社長さんだと思いました。

    もちろん。社長でなかったらこんな店を抱えられない…。まあでも楽しいですよ。次のステップはまた、全然違うことを考えようとは思いますが。もっと自分にとっていい方向性は何かを考える。それがずっと今の店かっていったら、そうではないでしょうね。このへんのテーマ、(料理人の)みんなに話したら、みんな違うこと言いますよ。やっぱり「料理人はもっと稼がなきゃ」って人もいるし、「ストイックでいなきゃ」っていう人もいるし。料理人同士で飲んだとき、聞くテーマって意外とそこなんです。いろんな人の考え方があって、面白いです。僕は聞きたい方だけど、飲みの席ではけっこう教えてくれます。

    今年は11月に韓国のミングルスとコラボレーションをして、ベルギー、オランダに行ったら、来年のことはもう少し後で考えます。10月くらいに50の発表があるので、それによってまた行動を考えます。入っているのか、入っていないのか、そこに向けてまだやっていくのか、別のことをやるのか、考えなくてはいけない。

    Fin.