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    Serial連載

    小林 寛司La vita di naturale 日々をつむぐ料理

    Vol.4  播種(つづき) 9月

    和歌山のレストラン「ヴィラ アイーダ」の日常を、編集部の取材をもとにお届けします。

    PHOTO: CUISINIER編集部
    円柱状に冷やし固めたオパリーヌ

    Vol.3 播種 9月」の、翌日のお話です。

    翌朝は晴れ。空気が澄んで、アイーダのまわりに咲いている花が、前日よりもきれいに見えました。お店の裏の畑にアーモンドの木が植わっているのですが、その花も咲いています。本来は春が花の季節のため、畑の水やりに出ていた有巳さんが「狂い咲きですねえ」と言っていました。

    お店の奥の応接室(小林シェフは「サロン」と呼んでいました)には、焼き上がったパン。厨房をのぞくと、ランチに使う野菜を仕込み中でした。ナスにゴーヤにトマト。それと、ニンジン、キノコ。厨房も、夏から秋へ移っているようです。

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    • パンは朝一番で焼かれていました

    • 畑でとれた野菜をどんどん仕込みます

    • サルシッチャ(ソーセージ)はまかない用です。

    • 自家製スパイスと野菜パウダー

    • 茹であげた玉葱のマリネ。肉料理のつけあわせです

    • 春菊の蕾のピクルス。一般的には、春菊は葉野菜としての旬を終えると、蕾がつく前に別の野菜と入れ替えます

    • この年のトマトパウダー

    • なんでも乾燥させてみるそうです

    • 予約を確認し、ランチが始まります

    盛りつけ台には、小さなビーカーに入った10種以上のパウダーが置かれていました。スパイスと、畑の野菜で作ったパウダーです。営業中、スタッフさんがバックヤードから持ってきたトマトペーストも自家製。乾燥器の棚らしきトレーには、柑橘か何かの葉っぱ。瓶には春菊の蕾のピクルス……。フレッシュの素材だけでなく、加工したもの、加工中のもの、アイーダの厨房(と恐らくバックヤードも)は、いろいろな段階の食材でいっぱいです。

    仕込みをしながら、小林シェフが肉(牛スジ?)とゴボウなどの根菜を煮始めました。お店のメニューではなさそうな、と見ていたら、シェフが「これは僕のおやつです」と言いました。

    ランチが始まると、コースの進み具合に合わせてニンジンを焼いて、ナスを焼いて、キノコを炒めて……その間に、プラックの隅にかけられた煮込みは美味しそうな色になっていきました。「時間のあるときに、こういうのを作っておくんです。僕は、うちの野菜が好き。疲れてる時に食べるものがないと、外とかで食べることになっちゃう」 それは気持ちも疲れてしまうだろうなと、編集部員は思いました。

    シェフは営業中、焼いたりゆでたり煮たりした素材を皿にのせると、パウダーやハーブやスパイスを、サッサッとふったり、パサッとまいたり、スプーンから指でトントンと落としたりして、料理を仕上げていきました。ときには何種類も使い、それは、皿の中でできあがっていく味が、目で見えるようでした。

    • 肉の掃除で出たすじ。ひと口より少し大きめに切って

    • 畑でとれた根菜と水から火にかけます

    • 鴨脂でじっくり焼きます

    • 出始めのキノコは前菜に

    • タイムをとりに裏の畑へ

    • あちこちにバッタがいました

    • そろそろ終わりのナス

    • 一気に中まで熱く焼いて

    • 手早く引きあげて

    • オイルでマリネ

    • スタッフさんが盛りつけを始めました

    • イカもサッと焼いて

    • お皿が出来上がっていきます

    • その傍でニンジンはゆっくりと仕上がっていきます

    • シェフのおやつも色よくなってきました

    円柱状に冷やし固めたオパリーヌ

    この日もランチが終わると、シェフは畑へ。昨日草刈りをしたブルーベリー畑で、木の撤収です。抜きやすいようにするためか、枝を何本かハサミで切り取ってから、腰を入れて根元から引き抜きました。力が必要そうです、と言うと、シェフは「木に元気がないから、そうでもないです。枝を切ってみるとわかりますよ」と言って、枝の途中を切って見せてくれました。断面は中心の色が変わっていました。切ったり抜いたりした枝は、一輪車で運ばれて、畑の隅に山になっていました。

    ブルーベリーの隣のハウスには、枝豆が植わっています。このとき、8月に鳴いていたコオロギの姿はなく、カエルやバッタがたくさんいました。枝豆の葉っぱの上にいるそれらの生き物はきれいな緑色で、土の上にいるものは茶色や、褐色のまだら。これまで畑と縁のなかった編集部員は(これが保護色か…)と思い、それをやや興奮気味に小林シェフに言うと、「それはそうでしょ」とあっさり返されました。

    ちなみに、シェフは虫やカエルが苦手だそうで、それに対して有巳さんが「(苦手なのはしょうがないけど、虫もカエルも)ええやん、みんな生きてるんやから~」と、フォローしている姿を、ときどき見かけます。(なお、バッタは畑の作物を食べてしまいますが、大発生しなければ被害はそこまでひどくならないようで、アイーダでは放置されていました)

    一度お昼ごはんを食べに戻り、再び畑へ。シェフは枝豆の隣にのびた草を掃除。地面に張ってあるシート(前に植えてあった野菜の保温等が目的)をはがし、草刈り機で刈り取っていきます。有巳さんやスタッフさんは種まきと畝づくり。シェフは枝豆に水をやり、撤収したナスの山を焼くと(焼きナスができた!と言っていました)、畝づくりに加わりました。

    この日も、太陽が沈むまで畑にいました。

     

    • お昼ごはん。自分で作ったサルシッチャを食べて、シェフは「普通やな」と言っていました

    • 土にかぶせてあったシートをはがして

    • 草刈り。次の野菜を育てるための準備です

    • あっちの畑でも、こっちの畑でも、種をまいていました

    • 種の袋をいくつも持って、畝を移動していきます

    • 芽が出るように育つように水をやって

    • 草をとって土をおこして

    • 日があるうちにできることをします

    • 明日はお店はおやすみです

    Fin.