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    Serial連載

    髙橋 雄二郎ル スプートニクのデザート

    Vol.10 ショコラフランボワーズ

    チョコとチュイルの繊細なケースの中に、ドーナツ状のパルフェ。その中央にベジタブルゼラチンで包んだフランボワーズソース。テーブルで熱いチョコレートを注ぎ、パルフェが溶けかかったところを食べてもらいます。定番の味、かつシンプルな構成ですが、チョコとフランボワーズが口の中で合わさることで相性のよさが引き立ち、溶けていくパルフェのなめらかな食感で重さを感じさせません。

    PHOTO: MASAKO KAKIZAKI

    Elément de configuration

    ショコラフランボワーズの構成要素

    下の各パーツをクリック(タップ)すると、作り方や使い方が表示されます。

    • パルフェ・ショコラとグラス・ピスタチオ

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      パルフェ・ショコラとグラス・ピスタチオの作り方

      1. (パルフェ・ショコラ)チョコレート(ヴァローナ社マンジャリ)を湯せんで溶かし(40~45℃)、キルシュを加えて混ぜる。
      2. 鍋に水とグラニュー糖を合わせて火にかけ、118℃まで上げる(シロップ)。卵黄をミキサーにかけ、シロップを少しずつ加えながら混ぜる(パータ・ボンブ)。
      3. 2に1を加えて混ぜ、七分立てにした生クリームを数回に分けて合わせる。
      4. (ピスタチオアイス)鍋に牛乳、生クリーム、トレハロース、トレモリンを合わせて火にかけ、温める。
      5. ボウルに卵黄とグラニュー糖を合わせて白っぽくなるまですり混ぜ、4を加えて混ぜ合わせる。鍋に戻して炊き上げる。
      6. ボウルにピスタチオペーストを入れてほぐし、5を漉しながら加えてよく混ぜる。ハンディブレンダーでなめらかになるまで撹拌し、アイスクリームマシンにかける。
      7. 3を絞り袋に詰め、セルクルの内側にドーナツ状に絞る。(少しやわらかい状態)も絞り袋に詰め、絞った3の上にドーナツ状に絞る。その上に3をもう一度絞る。中央をセルクルで抜く(はみ出たパルフェとアイスを抜いてきれいなドーナツ状にする)。
    • チョコレートの蓋

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      チョコレートの蓋の作り方

      1. チョコレートを溶かしてオーブンシートに流して薄くのばして固める。
      2. 金粉をふり、チュイルよりもひとまわり大きなセルクルで抜く。
    • チュイル

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      チュイルの作り方

      1. ココアパウダーと薄力粉を合わせてふるう。卵白を加え、すり混ぜる。
      2. 溶かしバターにグラニュー糖、ハチミツ、1を順に加えてそのつどすり混ぜる。
      3. オーブンシートを敷いた天板に長方形の紙型を置き、②を薄くのばしてオーブンで焼き、熱いうちにパルフェよりもひとまわり大きなセルクルに巻きつけて形を整える。
    • フランボワーズソース

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      フランボワーズソースの作り方

        1. フランボワーズピュレ、冷凍フランボワーズ、シロップ、水をミキサーで撹拌する。レモン汁、キルシュを加えて混ぜる。
        2. 半球形のシリコン型に1を流して冷凍する。
        3. 2をベジタブルゼラチン液にくぐらせ、冷蔵庫で解凍する。

      ※ベジタブルゼラチン液…鍋に37gのベジタブルゼラチン、750gの水を入れて火にかけ、ゼラチンを溶かす。グラニュー糖755gを入れたボウルに注いで泡立て器で混ぜる。鍋に戻して火にかけ、70gまで上げて火からおろす。

    • その他のパーツ

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      その他のパーツ

      フレッシュフランボワーズ、ナッツ(ピスタチオ、ヘーゼルナッツ)

    • ショコラショー

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      ショコラショーの作り方

      牛乳を温め、溶かしたチョコレート(ヴァローナ社マンジャリ)を加えて混ぜ合わせる。

    ショコラフランボワーズの組み立て

    円柱状に冷やし固めたオパリーヌ
    平皿を使用。パルフェを皿の中央にのせる。

    Column こぼれ取材

    編集部 今回のデザートは、レストランデザートらしいお皿を作りたかったと伺いました。

    髙橋 ええ。味としては定番中の定番だと思いますが。チョコレートとフランボワーズとピスタチオ。それを表現するにあたって、レストランデセールらしく、あと、重たくなく食べられるようにしたいなと。

    デセールらしくという部分では、お菓子屋さんのお菓子は、温かい状態はまずないじゃないですか? 皿盛りでしか表現できないところかなと。重さの点では、この皿はチョコレートが主体でけっこうボリュームがあるのですが、その温度差があることによって食べやすく……溶けて、つまり液体化すると、濃厚すぎないというか、舌の上に残りづらい。

    演出的に何かを溶かすのも、レストランならではかなと思って。動きがあるので。このデザートは、出てきた瞬間、すごくシンプルに感じると思います。「これなんだ?」っていうところから、溶かして、中にフランボワーズのソースがある。……フランボワーズのソースをかけてもいいんですけど、それだとフランボワーズの比率が高くなりすぎてしまうので、(ベジタブルゼラチンで包んで)中に入れてしまって、温かいチョコレートで溶かして、中で混ざっていく。全部溶けきるわけではなく、アイスの部分と溶けている部分とで、混ぜて食べてもらう。

    編集部 提供時の見た目は本当にシンプルですね。デザインはどのように考えたのですか?

    髙橋 こういうプレゼンテーションは、球体のチョコレートを溶かすパターンもあるじゃないですか(チョコレートが溶けて中身が見える)。以前やっていたこともあるのですが、よくあるなと思って。器に溶ける蓋をのせておくというパターンもありますが、器ごと食べられる感じにしたくてこういうつくりに。

    あと、このパルフェのレシピが優秀で。

    編集部 優秀? チョコレートのパルフェとピスタチオのアイスで層になっていますね。

    髙橋 チョコパルフェのレシピが、けっこう、クリーミーな感じのレシピになっているので、食べて濃厚すぎないというか。

    編集部 カカオ分が強すぎないということですか?

    髙橋 うーん、難しいんですけど、口の中に滞在する時間がそんなに長くないというか。まあ、口どけのいいパルフェのレシピだと思います。

    編集部 口どけのよいレシピとは、どのあたりでしょうか?

    髙橋 パータ・ボンブの泡立てですかね。これはムースではないのでちょっと違うかもしれないのですが、たとえば、前にも話しましたがチョコレートのムースは基本二種類がベースです。なめらかタイプはアングレーズベース、ふんわりさせたかったら気泡を含んだボンブベース。今回は気泡を含んでいるので……まあ、パルフェ自体は、基本的にイタメレかボンブが入るんですけど。空気を入れないとかちかちになるので。

    編集部 マシンでまわさないからですね。

    髙橋 そうです。なので、気泡を含んでいる分、口どけもいいんじゃないかなと……口どけがいいと言うか、軽く仕上がっている。あと、生クリームの比率が高いのでクリーミーです。

    編集部 味や食感のいろいろな要素で、舌に重く残らないパルフェなんですね。チョコとボンブ、生クリームを合わせるときの温度のポイントはありますか?

    髙橋 チョコレートは溶ければOKです(40~45℃の湯せんで溶かす)。温度が高すぎると立てた生クリームがだれるので、基本的には30℃後半くらいで合わせて28℃くらいを目指すんですけど、(先にチョコレートと合わせる)ボンブは(熱いシロップを加えて立てるが)、立て終わったところで温かくはないですし、このレシピではあまり温度に神経質になる必要はないと思います。

    編集部 今回、マンジャリ(ヴァローナ社のチョコレート)とフランボワーズを合わせていますね。

    髙橋 そうですね。定番の組み合わせです。

    編集部 以前柚子のデザートにも使っていたチョコレートですね。チョコレートと素材の相性について教えてください。

    髙橋 まず、マンジャリというチョコレートが、赤い果実の香りがします。それを同じタイプの素材(フランボワーズ)と合わせて相乗効果を狙っています。

    マンジャリというチョコレートは、単体で食べると(個人的に)あまり美味しいと感じないくらい酸味があって、「変だなー、変なチョコレートだなー」って(笑)、初めて食べるとびっくりする感じです。

    でも、素材と組ませると本領を発揮すると思います。他にも酸味のあるチョコレートは、ドモーリのサンビラーノ、エルレイのサンホワキンなどがありますが、それぞれ個性的です。サンホワキンは酸味がかなり強いと思います。サンビラーノは、甘さがかなり抑えてあるように感じ、チョコだけ食べても美味しい。今回のマンジャリは、素材と組み合わせるとわかりやすい味になるというか。やや糖分が高くて、カカオパーセンテージはそんなに高くないのですが。

    編集部 わかりやすいというのはどういうことですか?

    髙橋 たとえば同じヴァローナだと、ジヴァララクテ(ミルクチョコレート)とオレンジとか、そう組み合わせるためにあるんじゃないかというくらい相性がいいと思います。

    編集部 ああ、組み合わせた結果、誰が食べてもわかりやすい美味しさになる、ということでしょうか。

    髙橋 そうですね。そういうチョコレートが多いと思います。もちろん単体で食べても美味しいんですけど。

    もともと、なんでチョコレート好き……というかチョコレートに興味をもったかというと、ミルクチョコレートとオレンジという組み合わせ。チョコレートは、素材と組み合わせるときに、なんでもいいわけではなくて、ミルクだったりビターだったりがあって。でも、そんなこと知らなかったときに、その組み合わせを食べて。

    編集部 こんなに合うのかと。髙橋シェフはスイーツ好きと伺っているので、知らなかったというのが意外です。

    髙橋 料理を始める前の話ですよ。当時、パリセヴェイユ(自由が丘)のムッシュアルノーや、ラヴィドゥース(曙橋)のバッカス(ラ・ヴィ・バッカス)を食べて。オレンジピールチョコ(オランジェット)の組み合わせが美味しいのは知っていたんですけど、それってビター(が多い)じゃないですか? 「ミルクチョコレートでこんなに美味しいなんて」って。

    編集部 やはりその時点ですでにマニアックなように思います(笑)。

    髙橋 そういうところから興味をもって。ミルクチョコレートとオレンジの組み合わせも、今では定番になっていますが。

    編集部 その頃は違ったんですね。

    髙橋 ええ、20年くらい前。今はいろいろなチョコレートがありますけど、当時は珍しかったと思います。それでジヴァララクテがはやって、いろいろなパティスリーで使われて。今でもジヴァララクテの味をそのまま表現するお菓子を作っている方もいらっしゃって、それも美味しいですよ。

     

    次回は「蕗の薹のグラス」をお届けする予定です。