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    Serial連載

    髙橋 雄二郎ル スプートニクのデザート

    Vol.12 苺、パスティス、フェンネル

    薄く軽いメレンゲの中に、イチゴとココナッツのムース。アニスやフェンネルの香りでさわやかにまとめます。

    PHOTO: MASAKO KAKIZAKI

    Elément de configuration

    苺、パスティス、フェンネルの構成要素

    下の各パーツをクリック(タップ)すると、作り方や使い方が表示されます。

    • 苺とココナッツのムース

      苺とココナッツのムースの作り方

      1. 苺のムースを作る。イチゴピュレ(冷凍)はざく切りにし、湯せんで溶かす。
      2. グラニュー糖を加えて溶かし、水でもどした粉ゼラチンも加えて溶かす。クレーム・ド・フランボワーズを加えて混ぜる。
      3. 八分立ての生クリームを加えて合わせる。バットに流して冷凍し、キューブ状にカットする。
      4. ココナッツのムースを作る。ホワイトチョコレートを湯せんで溶かし、沸かしたココナッツピュレを加えてハンドミキサーにかけ、ガナッシュにする。
      5. 粉ゼラチンを加えて溶かし、ココナッツリキュール、ラム酒を加えて混ぜる。
      6. 七分立ての生クリーム、イタリアンメレンゲを加えてそのつど合わせる。
      7. 半球型に流し、中央に苺のムースを埋め込む。
    • パスティスのジュレ

      パスティスのジュレ

      1. 水、グラニュー糖を合わせて沸かし、砂糖を溶かして冷ます。
      2. ライムとレモンの皮(すりおろし)、フェンネルの葉、水を加えて蓋をし、火からおろして10分ほどアンフュゼする。
      3. 2を漉してパスティスを加え、1.6%のゼラチンを加えて溶かす。冷蔵庫で冷やし固める。
    • メレンゲ

      メレンゲの作り方

      1. 鍋に水あめ、グラニュー糖、水を合わせて火にかけ、118℃まで上げる。
      2. 卵白をミキサーにかけ、立ってきたところに1を糸をたらすように加えてツヤが出てくるまで撹拌する。
      3. 半球のシリコン型の凸面に2をナッペし、70℃で2時間ほど乾燥焼きする。型からはがす。
    • ビスキュイ・ジョコンド

      ビスキュイ・ジョコンドの作り方

      1. ミキシングボウルに粉糖、卵黄、卵白を合わせ、リュバン状まで立てる。
      2. 卵白、グラニュー糖でメレンゲを立てる。
      3. 1に2の3分の1を加え、2、3回ゴムベラで混ぜたら薄力粉を加えてさっくりと合わせる。残りの2を加えて合わせる。
      4. シルパットを敷いた鉄板に3を気泡を潰さないように7㎜厚さにのばす。180℃のコンベクションオーブンで約8分焼き、カットする。
    • ライムのパウダーアイス

      ライムのパウダーアイスの作り方

      1. 牛乳、水あめ、トレハロース、ライム果皮(すりおろし)とライム果汁を合わせて温め、風味を移す。
      2. ホワイトチョコレート、フロマージュブランを加えて混ぜる。
      3. 液体窒素を加えてホイッパーで撹拌し、パウダーアイスにする。
    • セルフィーユのパウダーアイス

      セルフィーユのパウダーアイスの作り方

      1. 牛乳、グラニュー糖を合わせて沸かし冷ます。
      2. 1をセルフィーユの葉とともにミキサーでまわす。
      3. 生クリーム、水あめを加えてまわし、漉す。
      4. 液体窒素を加えてホイッパーで撹拌し、パウダーアイスにする。
    • 粉糖

      粉糖

      仕上げにふりかけます。

    • イチゴ、フェンネル

      イチゴ、フェンネル

      イチゴはカットして使います。フェンネルは仕上げ用です。

    • ライム

      ライム

      仕上げに皮を削りかけます。

    苺、パスティス、フェンネルの組み立て

    円柱状に冷やし固めたオパリーヌ
    平皿を使用。

    Column こぼれ取材

    編集部――このデザートの組み合わせには、何か元があるのですか?

    髙橋――イチゴとパスティス(アニス系のリキュール)は合うだろうというところから、以前この組み合わせのアヴァンデセール(一皿目の小さなデザート)を作っていたんです。その評判がよかったので、メインデセールに落とし込んで、こういう形になっています。

    編集部――アヴァンデセールのときはどんなふうに盛りつけていたのでしょうか?

    髙橋――クープ(足つきの浅いグラスのような器)に層状に組むスタイルで、ジュレの比率を高くしていました。ムースの上にジュレを流して固めておいて、提供するときにフェンネルのアイスをのせて、薄切りにしたフェンネルの乾燥をさして。

    ……昔は、きれいな層を出すのがかっこよかったと思うんですけど、今って、前もってきれいに組まれていると、逆に美味しそうに感じなくなっているような気がするんですよね。魅力が弱くなっているというか。今はどちらかというと、その場で盛った感じのほうが美味しそうに受け取られるというか。そういうところから、僕はクープ自体をあまり使わなくなってきて、今のお店にはクープがないです。

    編集部――このお店にクープがないということは、アヴァンデセールは、前のお店(ル・ジュー・ドゥ・ラシエット)で作っていたものですか?

    髙橋――そうです。ただ、今回のデザートはもともと、イチゴとヨモギを使って何かやろうかなと思っていたんです。でもヨモギがまだ出てきていなくて、じゃあ前にやっていたデザートで何かという流れで。イチゴを使ったデザートって、意外と、あまり思いつかなくて定番のものになりがちなんですけど、パスティスだったらいいかなと。そしたら評判がいいです。軽いですし。

    編集部――ヨモギだとまた違った感じになりそうですね。

    髙橋――そうですね。ヨモギだったらチョコレートを合わせるかなと思います。

    編集部――ホワイトチョコレートですか?

    髙橋――いや、ブラックでいくと思います。苦味を強調したいので、丸くするよりは、僕はあえて同じ苦味を合わせていくほうを選ぶと思います。細かい部分はやってみないとわからないですけど。……あ、あった。前の、クープのときの写真もありますよ。

    編集部――……! ラシエットさんっぽいです。

    髙橋――どういうことですか(苦笑)。

    編集部――当時の取材で、こうした雰囲気のお料理を拝見したなあと思いまして。

    髙橋――盛りつけが変わるだけでイメージが変わるということですよ。

    編集部――時代で表現が変わるんですね……。今回のように、以前作っていたメニューで盛りつけを変えることは結構あるのですか?

    髙橋――そうですね。「あの味には自信があるけど、あの盛りつけはちょっと今は使えないな」というときは、変えますね。要素も必要に合わせて変えます。

    編集部――今の時代の盛りつけについて、先ほども少しお話がありましたが、どのように変わってきていると思いますか?

    髙橋――見た目から味が想像できすぎるよりは、なんだろうなって思わせること。ただ、僕はあえて素材そのもので投げかけることもあります。どういう皿の狙いでいくかによって、一概にひとつのパターンに絞っているわけではないです。

    デザートとか前菜は、わりと形がいじりやすいじゃないですか? 好きな形にしやすい。だから、見た目で「なんだろう」っていうのは、自由度が高い気がします。ただ、アヴァンデセール、メインデセールと2、3パターン出すときに、続かないようにはします。素材感の強い皿があったら、次に、「あれ、これなんだ?」みたいな。

    編集部――変化があると、食べるほうも楽しいですね。今回、この盛りつけになった流れを教えてください。

    髙橋――構成的には、ココナッツのムースを加えてちょっと重量感とコクをプラスして、その分ジュレの比率は下げています。とは言っても、味のバランス上、大きめにすくっていますけど。みずみずしさを表現したくて……ジュレはガトーの中に入れるとき、だいたいセンターですよね。でも、それだとみずみずしさが出にくいと思って。メレンゲで覆ってちょっとジュレが見えていると、みずみずしい感じが出て、それが見た目の軽さにもつながるのかなと。

    それと、イチゴを使うんですけど、あえて表面に出さないようにしています。イチゴってちょっと色が、なんというか、ストレートすぎる。「イチゴ」の色じゃないですか? ちょっと幼稚な感じになるかなと。

    編集部――幼稚?

    髙橋――僕は、イチゴって子どもっぽいイメージをもっていて。茎がついていたりするとまた別の印象になると思うんですけど、普通のイチゴがポンとのっていると、ショートケーキのイメージもあって親しみやすすぎて。それよりも非日常っぽい盛りつけにしたいなと。

    編集部――見て、なんとなく味の想像がついてしまうということでしょうか?

    髙橋――そうです。それよりも、目の前にきた瞬間に「あ、これなんだろう」っていう感じのほうが面白いかなと。あと、今回は主役がイチゴではなく組み合わせの妙なので。

    編集部――そうですね。イチゴミルクキャンディーのような甘い雰囲気もありますが、全体的にはすっきりとした印象が残りました。

     

    次回は「クレームブリュレ」をお届けする予定です。